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4061498932.jpg 「司法は腐り人権滅ぶ」著者 井上薫

最初に結論。クロスケはこの本をオススメしません(笑)。
まぁこういう見解もあるんだよ、という気持ちで読むのならかまいませんが。
長くなってしまったので、興味ない方は最後の段落だけ読んでくだされば(^_^;)。

この著者の主張は次のようなものだと思う。
「裁判所の行う判決には、一般論や蛇足を含むものがある。これは司法権の越権行為であり、違法である。このような越権行為を放置することは人権侵害にあたる。」
「たとえば、靖国神社参拝に関する事件において、本来述べなくてもよい憲法問題について触れ、国民に対し「国の行為は違憲である」とわざわざ提示することで、国家権力を振りかざしている。国民もそれをまた鵜呑みにしており、どこか裁判所を神聖化している部分がある。今こそ司法の違法について、主権者としての国民が怒りをぶつけるときである」
以上のような主張を国民に知らしめることを本の主軸としている。

確かに文章自体は法律家でなくても読めるように非常に砕けてかかれてあり、一般の方が読んでも苦痛を感じにくいものとなっている。
ただ、それだけにこの本に含まれている暴走を、読者が鵜呑みにしてしまうことには問題があると思った。

もっと著者の主張を要約すれば、「判決で余計なことは述べるな、判決は国家権力の行使なんだから、権限を越えるな」というものである。
しかし、それで本当に国民が納得するのだろうか。
靖国問題にしても、本来原告が争いたいのはまさに憲法問題であるにもかかわらず、それについて触れずに「いや、権限外ですから」と突っぱねる裁判所に、誰が信頼を寄せるのだろう?
また、こういった問題に対し、憲法的判断を下しうる立場にある人間は他にいるのだろうか?

確かに、憲法裁判所(憲法問題について判断をくだす裁判所)のない日本の裁判所においては、抽象的に憲法問題だけを取り上げるわけにはいかないだろう。
でも、それが何らかの形で個別の事件として争われるのであれば、その限りで憲法判断をすることもまた、裁判所の責務であるということに何の問題があるのだろうか。
違憲とされながらもそれについて上訴できないという国側の不利益はあるが、それは結局上訴制度の問題であって、違憲審査権の行使自体を否定する理由にはならないだろう。

理論的に言えば著者のいうことにも筋が通っているのだろう。しかし、形式論理では納得いかない部分を実質論に照らして正当化できないか模索するのが法律家なのだから、単にその形式論理を突き通そうとする姿勢には違和感がある。
実際裁判所が越権行為をやっていると聞いても、むしろ国会、政府の方が越権行為をやっていると感じる人の方が多いと思う。国会、政府の行為に越権行為があると裁判所が感じるのであれば、著者のいういわゆる一般論や蛇足判決をしたとしても(もちろん憲法裁判所ではないのだから、事件に関係する範囲に限られるであろうが)、むしろ三権分立を維持するためには必要な行為ではないかと思う。
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プロフィール
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クロスケ
年齢:
42
性別:
男性
誕生日:
1982/10/26
自己紹介:
しがない司法修習予定者です。

もっぱら備忘のためと日記をつけることを始めました。

とはいえ、ときどきわけの分からないことが書かれることもあるので、そのときは気兼ねなく突っ込んでいただけるとありがたいです。
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